恩田晃 ディレクション
Voices Beyond Asia(流浪する音楽)
「アジア」を超えて新たな音楽形態を獲得するということ、思いがけない可能性を探るということ — ここに紹介する3組のアーティストは、出自も、キャリアを形成した都市環境も異なる。だが、複数の音楽のスタイルを接合し、独自の解釈を取り込み、それらをある種の普遍性を得た表現にまで高めた点では一致している。
ハノイのゴック・ダイは、ベトナムの検閲制度をまっこうから批判しながら、表現の自由を求るシャンソンを歌う。ジョグジャカルタのセンヤワは、欧米や日本のエキスペリメンタルミュージックの記号を解読し、そこに自らの文化の要素を散りばめたスタイルを提示した。ここ数年のいくつもの大陸での成功は、彼らの音楽の特殊性が世界に通用することを証明してみせた 。ニューヨークのジェン・シューは、ジャズというバックグラウンドを持ちながら、アジア各地に出向いて伝統音楽のリサーチを行い、どちらにも属さない浮き島の音楽を創りあげた。それは、同時に、アジアの血を引く彼女のソウル・サーチングでもある。
恩田晃
(サウンドアーティスト/キュレーター)
日本に生まれ、ニューヨーク在住。四半世紀に渡って録り溜めたフィールド・レコーディングを用いた『カセット・メモリーズ』で知られている。キュレーターとして、吉増剛造、鈴木昭男、大友良英、堀尾寛太、山川冬樹らの北米でのツアーや展覧会をポートランドのTBAフェスティバル、NYのザ・キッチンなどで企画してきた。