横堀ふみ ディレクション
その身体は、そのダンスは、その作品は、だれの眼差しによって、つくられてきたのか。それらの眼差しのありかを微細に見つめ、そこに横たわる距離感やズレを操作し、余白を紡ぎ出す “翻訳”という作法。他者や異文化との接続により現前することを、普遍的な事象を、そこにある1つの身体を、作家独自のフィルターを通して伝達し、それらの眼差しの先にある身体に揺さぶりをかける。振付という行為に翻訳の作法を意識的に編み続けている2人の作家、余越保子と山下残の最新作を紹介する。
20年にわたりNYを拠点に作品を発表してきた余越保子は、翻訳を精微に秘したかと思えば、ダイナミックに可視化させ作品の多層性を露わにする。数多くの国際共同制作を行ってきた山下残は、一貫して“言葉”に拘りながら、その背後に広がる豊穣な文脈や政治性を鮮やかな手つきで見せる。この2人の作家が身体に空間に言葉に境界に編み込んだ翻訳の作法に誘われながら、作品に内在する複数のまなざしと共にダンスを体験したいと思う。
横堀ふみ
(NPO法人DANCE BOX プログラム・ディレクター)
神戸・新長田在住。1999年よりDANCE BOXに関わる。劇場Art Theater dB神戸を拠点に、滞在制作を経て上演する流れを確立し、ダンスを中心としたプログラム展開を行なう。同時に、アジアの様々な地域をルーツにもつ多文化が混在する新長田にて、独自のアジア展開を志向する。