Photo: Satoshi Nishizawa

Photo: Satoshi Nishizawa

「同時代」をどのように捉え、身体表現に取り組んでいるのか。
どのような歴史的背景や社会状況、もしくは個人的経験や生活文化に影響をうけ表現に結びついているか。そして、グローバル化する国際社会においてどのような展望をもつことができるか。本プロジェクトでは、このような問いのもとに、次代を担う東南アジアのアーティストを対象に行ったインタビューの数々を公開いたします。そして、インタビュアーには、多角的に生の声を収録できるよう、東南アジアに関心の深い日本のアーティストに依頼しました。

プロジェクト・リーダー:中村 茜

インタビュアー:塚原悠也、羽鳥嘉郎

インタビュイー:
ジェコ・シオンポ(インドネシア)
フィトリ・スティヤニンシ(インドネシア)
ルリー・シャバラ(インドネシア)
ナオミ・スリカンディ(インドネシア)
マーク・テ(マレーシア)
ナディーラ・ラジドゥ(マレーシア)
エリソン・タン・ユーヤン(シンガポール)
ルー・ズハン(シンガポール)

関連プログラム:TPAMコプロダクション ミーティング・プログラム

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Photo: Nobutaka Sato

中村茜

パフォーミングアーツ・プロデューサー
1979年東京生まれ。2004~2008年STスポット横浜プログラムディレクター。2006年、株式会社プリコグを設立。2004年より吾妻橋ダンスクロッシング、チェルフィッチュ、ニブロール、ミクニヤナイハラプロジェクト、康本雅子などの国内外の活動をプロデュース。海外の公演実績は25カ国50都市以上におよぶ。
2012年5月大分/別府にカフェ&クリエイティブスペースPUNTO PRECOGオープンするなど、新スペースを運営。2012年KAAT神奈川芸術劇場の舞台芸術フェスティバル・KAFE9をプロデュース、同年、国東半島アートプロジェクト2012および国東半島芸術祭2014・パフォーマンスプログラムディレクター。舞台制作者オープンネットワークON-PAM理事。2011年より日本大学芸術学部非常勤講師。

©contact Gonzo

©contact Gonzo

インタビュアープロフィール

塚原悠也

2002年よりNPO法人ダンスボックスのボランティアスタッフとして関わり、後に 制作スタッフとして勤務。
2006年にcontact Gonzoを立ち上げ、パフォーマンス、映像、音響、写真作品の 制作、雑誌の編集なども行う。
現在はダンスフェスのディレクション等も行い、2015年には個人名義のプロジェ クトも始動予定。

Photo: Satoshi Nishizawa

Photo: Satoshi Nishizawa

羽鳥嘉郎

1989年ブリュッセル生まれ。演出家、けのび代表。ワークショップ《自治》では、広義の演出と言える「教え」や「心がけ」を制作する。主な作品に《等々力》、《新しい宿に寄せて》、《ウィルキンソンと石》。2012年『演出集 しかしグッズ』刊行。KYOTO EXPERIMENT「使えるプログラム」ディレクター。

Photo: Iwan Pagaralam

Photo: Iwan Pagaralam

インタビュイープロフィール

ジェコ・シオンポ

本名、ジェク・クルニアワン・シオンポ・プイ。1975年4月4日、インドネシアのパプア州ジャヤプーラに生まれる。幼少の頃、ジャヤプーラのラワリ・ドック・8・バワにて伝統舞踊を学ぶ。北ジャヤプーラの高校を卒業した後、1994年よりIKJ(ジャカルタ芸術学校)にて舞踊を学ぶ。1999年には米国メイン州ポートランドにてヒップホップを学び、続いて2002年にジャカルタのゲーテ・インスティテュートから奨学金を得てドイツのフォルクヴァング・ダンス・スタジオで学ぶ。その後ジャカルタへ戻り、インドネシア国内だけでなく、マレーシアやシンガポール、日本、ドイツ、デンマーク、オーストラリア、米国、フランス、台湾、香港、ロシアなどでも作品を発表、ツアーしている。

Photo: Jacky Armansyah

Photo: Jacky Armansyah

フィトリ・スティヤニンシ

インドネシアのジャワ島中部、スラカルタ市にある国立芸術学校を卒業。ジャワ舞踊を学んだ後、2000年以降はコンテンポラリーダンスの身体を批判的に問い直すような、多種多様なスタイルを折衷した身体の獲得を目指す。現在彼女はダンスと美術、そしてパフォーマンスアートの間を何の区別もなく行き来し、「ダンスは単に動きの出来事ではない。ダンスは身体を中心軸にした日常の出来事になろうとしている」と宣言する。この考え方をもとに、フィトリは日常生活の動きやモノを使って作品を作っている。2011年にはTEMPOという週刊誌で、インドネシアで「もっとも影響力のあるアーティスト」のひとりに選ばれ、またクロラ財団から「女性アーティスト地位向上」のコミッションを受けて2年間で2作品を制作した。そのうちのひとつ、『ビンタン・ヘニング(静かな星)』(2011)は2014年秋にヨーロッパをツアーした。彼女はたった今、韓国光州アジア・アーツ・センターの委嘱作品を完成させたところだ。

Photo: Tony Yang

Photo: Tony Yang

ルリー・シャバラ

インドネシアのジャワ島、ジョグジャカルタ出身の二人組音楽ユニット「センヤワ」は、ジャワ音楽の音色をユニークに奏でると同時に、実験音楽の枠組みをも探求し、両ジャンルの境界線を押し広げている。前衛的な要素と伝統文化をバランスよくブレンドし、真にコンテンポラリーなインドネシア音楽を作り出している。そのサウンドは、ルリー・シャバラの巧みに拡張されたヴォーカルのテクニック、そして自分で楽器を作るウキル・スルヤディのモダン・プリミティブなインストゥルメントの熱狂的な部族主義的音楽からなる。彼が発明した手作りの「竹槍」は、太い竹の幹にパーカッシブな竹の皮の細い帯をくくりつけ、そこにスチールの弦が張ってあり、ダイナミックな音を出す。打楽器としてもリズムを刻むことができると同時に、弓や指でメロディを奏でることもできる。

Photo: Asa Rahmana

Photo: Asa Rahmana

ナオミ・スリカンディ

インドネシアの演出家。テキストと身体表現を用い、日常生活のイメージや音、言葉が今の政治にどのような影響を与えているのかを美学の枠組みの中で探求する。彼女の文章はペナ・ケンカナ文学賞「インドネシア最優秀短編20作品」に選ばれ、戯曲では『Perbuatan
Serong(倒錯行為)』、『Goyang
Penasaran(過度の捻じれ)』などが出版されている。これまでに多くのアジアの著名なアーティストたちと共同作業をしている。中でもユディ・アフマド・タジュディン(インドネシア)、ニーラム・マンシン・チャウドゥリー(インド)、ゴー・ブーンテック(シンガポール)、サイダ・ラスタム(マーレシア)などとのコラボレーションでは、シンガポールのインソムニア48やベルリンのイン・トランジットなど、アジアやヨーロッパ諸都市をツアーしている。
韓国原州のフーヨン舞台芸術センターやアムステルダム芸術大学院演劇科にてレジデンスを行った。ストックホルムで開催された女性戯曲作家会議での『メデア・メディア』公演および『過度の捻じれ』などのプロジェクトでケロラ財団のEWA助成金を受ける。現在、テアター・ガラシ/ガラシ舞台芸術研究所の副芸術監督を務めている。

Photo: Andy Darrel Gomes

Photo: Andy Darrel Gomes

マーク・テ

マレーシアの演出家、キュレーター、研究者。歴史や記憶、都市といったテーマで幅広いプロジェクトに携わっている。主にパフォーマンスや教育の分野でコラボレーションを行っているが、展覧会やニューメディア、執筆、社会活動といった分野でも活躍している。ロンドン大学ゴールドスミス校で芸術政治専攻で修士課程を修了し、現在はマレーシアのサンウェイ大学でパフォーマンス・メディア科で教鞭を取っている。またマレーシアのアーティスト、アクティビスト、そしてプロデューサーの集団であるファイブ・アーツ・センターのメンバーでもある。

 

Photo:
Normalrizwan Kamaduddin

ナディーラ・ラジドゥ

本名、ヌルル・ナディーラ・ビンティ・モフド・ラジドゥ。1991年生まれ。ASWARA(マレーシア国立文化芸術遺産大学)の舞踊専攻で学士号を取得、現在、同大学振付専攻の最終学年に在籍。これまでに『クエスチョンマーク』、『DoI?』、『Sampaikan(伝え渡す)』、『Madu(蜂蜜)』といった多くのコンテンポラリーダンス作品を発表し、マレーシアのもっとも注目される若い振付家のひとりと評されている。また、『Main Zapin』や『タペストリー』、『Asyik』といった伝統舞踊作品にもダンサーとして数多く出演。Short + SweetやKIV、2by2といった国内のダンスフェスティバルにも多く参加し、中国やシンガポールでも作品を発表している。

Photo: Juliana Tan

Photo: Juliana Tan

エリソン・タン・ユーヤン

シンガポール国立大学の演劇科を卒業。最近の出演作はOur Company の『Dear Nora』、ブライアン・ゴトング・タンの『Sublime Monsters and Virtual Children』、Cake Theatrical Productions の『Temple Reconstructed』、そしてThe Finger Players の『Turn by Turn We Turn』など。ECNADやCake Theatrical Productions、The Finger Players、Nine Years Theatre、this collective などの劇団で研鑽を積む。エリソンは戯曲作家でもあり、代表作に『The Eulogy Project I: Muah Chee Mei and Me』(Potluck Productions)、『吴刚成仙记』(Handsforth、エスプラネードのムーンフェスト2014 参加作品)などがある。現在、研究生としてThe Finger Players に所属している。

Photo: Samantha Tio

Photo: Samantha Tio

ルー・ズハン

シンガポールを拠点に活動するパフォーマンスおよび映像アーティスト。恥の感覚の愛による転移と変異を表現する作品を目指している。最近は身体と歴史の間の緊張を暴露する作品を発表している。2011年にシカゴ・アート・インスティテュートの修士課程を卒業。映像作品は各地の国際映画祭で上映されており、ソロのパフォーマンスはM1 シンガポール・フリンジ・フェスティバルなどで上演されている。

撮影者プロフィール

松見拓也(インドネシア)

1986年生まれ。京都精華大学デザイン学部ビジュアルデザイン学科卒業。2010年よりパフォーマンスグループcontact Gonzoに加入。同年、NAZEと共に犯罪ボーイズを結成。在学中よりフリーランスのデザイナー/フォトグラファーとしての活動を続けている。

西澤諭志(マレーシア、シンガポール)

写真家。カメラを用いて、個人の身近な場所や暮らしに目を向けた作品を制作する。主な展覧会に「西澤諭志展 ドキュメンタリーのハードコア」(2011)SANAGI FINE ARTS、「空想する都市学」(2014) Arts Chiyoda3331など。他に映画「百光」(2013)の上映会も行う。