TPAMディレクション ディレクターズ・トーク

それぞれの活動現場から離れ、TPAMディレクションというフレームに向かい合いプログラムを企画した3ディレクターによるポスト・パフォーマンス・トーク。どのような問題意識をモチベーションとしてコンセプトを立て、どのような対話がアーティストとなされてきたのか。前回までTPAMディレクションのディレクターを務めた中村茜氏と野村政之氏をモデレーターとして迎え、アーティストと観客、舞台芸術と社会をつなぐ制作者としての視点から各プログラムについて掘り下げます。

 


2月14日(木)杉原邦生『½PAナイッ!?』終演後(17:00ごろ)
KAAT神奈川芸術劇場<5Fメインロビー>
宮永琢生 × 中村茜
日英通訳あり

宮永琢生(ままごと/ズキュンズ)プロフィールはこちら
中村茜(プロデューサー/株式会社プリコグ 代表取締役/NPO法人ドリフターズ・インターナショナル 理事)

中村茜
1979年生まれ。日本大学芸術学部在籍中より舞台芸術に関わる。2004年-08年、STスポット横浜プログラムディレクター。06年、株式会社プリコグを立ち上げ、08年より同社代表取締役。04年より吾妻橋ダンスクロッシング、チェルフィッチュ、ニブロール、康本雅子などの国内外の活動をプロデュース。09年より那須高原で開催される野外フェスティバル「スペクタクル・イン・ザ・ファーム」企画・制作。09年10月、舞台芸術、ファッション、建築、グラフィックデザインなど領域を越境し同時代の創造性を社会に活かすNPO法人ドリフターズ・インターナショナルを設立。2012年5月、大分県別府市にフリースペースPUNTO PRECOGをオープンし、新たな地で芸術の場を模索する。2012年、国東半島アートプロジェクト2012・パフォーマンスプログラムディレクター。2011年より日本大学芸術学部演劇学科非常勤講師。


2月15日(金)
大橋可也『WAGASHI―my master, my words, my death, my will』村川拓也『ツァイトゲーバー』終演後(20:45ごろ)
KAAT神奈川芸術劇場
大平勝弘 × 野村政之
日英通訳あり

大平勝弘(STスポット 館長)プロフィールはこちら
野村政之(こまばアゴラ劇場 制作)


2月16日(土)
きたまり/KIKIKIKIKIKI『戯舞』劇団子供鉅人『Where is crocodile?』終演後(18:40ごろ)
KAAT神奈川芸術劇場<中・小スタジオ>
小倉由佳子 × 野村政之
日英通訳あり

小倉由佳子(アイホール/伊丹市立演劇ホール ディレクター)プロフィールはこちら
野村政之(こまばアゴラ劇場 制作)

野村政之
1978 年生まれ、長野県出身。劇団活動 – 公共ホール勤務を経て、2007年よりこまばアゴラ劇場・劇団青年団に所属。並行して、若手演出家の公演にドラマトゥルクほか様々な形で参加。主な参加作品として、ままごと『わが星』(2009、2011)、サンプル『自慢の息子』(2010、2012)、岡崎藝術座『レッドと黒の膨張する半球体』(2011)(以上ドラマトゥルク)、「キレなかった14才♥りたーんず」(2009/制作統括)、TPAM in Yokohama 蓮沼執太 × 山田亮太『タイム』(2012/プロデュース)、世田谷パブリックシアター・三重県文化会館・高知県立美術館・水戸芸術館共同制作「音楽劇『ファンファーレ』」(2012/制作・ドラマトゥルク)など。その他に公益財団法人セゾン文化財団・こまばアゴラ劇場主催「創造型劇場の芸術監督・プロデューサーのための基礎講座」(2010年度/運営担当)、舞台芸術制作者ネットワーク・ミーティング(仮称)発起人、桜美林大学非常勤講師、アサヒ・アートスクエア運営委員などを務める。


 

「クリエイティブ・ヨーロッパ・プログラム 2014–2020」について

 


2月14日(木)20:30–22:00
BankART Studio NYK 2F
日英通訳あり

第1部 20:30–21:15
カンファレンス「いかにしてヨーロッパとアジアの芸術的・文化的恊働を強化するか?」

ワークショップ「クリエイティブ・ヨーロッパ・プログラム 2014–2020:ユーロ=アジア恊働への窓口」への導入として、フランスのプロフェッショナル、ピエール・ソヴァジョ氏とアニエス・アンリ氏をスピーカーに招き、日本やアジアへの開かれたアプローチがヨーロッパにとってなぜ重要なのか、をテーマにカンファレンスを開きます。

スピーカー: ピエール・ソヴァジョ(作曲家/マルセイユ国立創造センターLieux Publics* ディレクター)、アニエス・アンリ(Extrapole ディレクター)

第2部 21:15–22:00
ワークショップ「クリエイティブ・ヨーロッパ・プログラム 2014–2020:ユーロ=アジア恊働への窓口」

グローバル化された世界において、ヨーロッパとアジアは両者の芸術的・文化的関係のあり方を再定義しようとしています。アジアとヨーロッパの当事者間の持続的な恊働を可能にする条件を創出することが必要です。このような恊働は、マーケットの原理のみに基づくアプローチとは異なり、公正さ、長期的視野、社会的問題意識に基づいて行なわれなければなりません。EUが近々開始する「クリエイティブ・ヨーロッパ・プログラム 2014–2020」は、世界中のプロフェッショナルの間に多様で多面的な対話を生むための興味深いツールになり得ます。このプログラムをご紹介し、ユーロ=アジアの未来の恊働に関心を持つプロフェッショナルのみなさんとディスカッションを始めるために、このワークショップを開催します。

主催:Relais Culture Europe**
プレゼンター:パルカル・ブリュネ(Relais Culture Europe ディレクター)、ローランス・バロン(Relais Culture Europe 政策アナリスト)


ピエール・ソヴァジョ
1970年代にThéâtre de l’Aquarium、Les Maclomasに参加し、トランペットを師事したベルナール・ヴィテのフリー・ジャズ運動に参加する。1983年、新設されたLieux publicsの招聘でオクトフォニック・コンサート『Faux-Vent』を開催。1985年、ミシェル・リスとともにDécor sonoreを結成し、数多くのクリエーションを行なう。2001年にLieux publicsディレクターに就任してからも、自身のクリエーションを常に追求し、国立創造センターであるLieux publicsのプロジェクトに個性を与えている。


アニエス・アンリ
芸術的発展/展開のプロセスや文化間協力をめぐる広範なスキルを提供する団体「Extrapole」のディレクター。欧州恊働に深く関わり、アジア(日本、韓国、台湾、オーストラリアなど)に協力のためのプラットフォームを構築している。


パスカル・ブリュネ
Relais Culture Europeディレクター。舞台芸術の分野でレンヌ/ブルターニュ国立振付センターのエグゼクティブ・ディレクター、振付開発プロジェクト「Isadora」共同ディレクター、ブールジュ実験音楽グループ事務局長などを歴任。欧州/国際文化協力に数年に渡って関わり、欧州/地中海恊働ネットワーク「DBM」の設立メンバーでもある。


ローランス・バロン
2005年よりRelais Culture Europeに所属。ヨーロッパの文化的状況という視点からの政策的分析を担当する。専門家、公共機関、ネットワークなど様々な協力者とともに、人材育成、出版、ディベート、協力プロジェクトなど多様な事業に取り組んでいる。


*Lieux publicsは、公共空間における芸術創造のためのヨーロッパのネットワーク「IN SITU」のプロジェクト・リーダーです。IN SITUはECの支援を受け、14カ国の19のパートナーとともに、ヨーロッパの公共空間を作り出したいという情熱で結ばれたアーティストやオーガナイザーのプラットフォームを構築しています。

**フランス文化・コミュニケーション省、EC、フランス外務省の助成を受け、Relais Culture Europeは文化やクリエーションに関わるフランスとヨーロッパ諸国のプロフェッショナル間の協力を推進しています。中間支援団体として、TPAMのような協力者とともに、ヨーロッパ/アジアのプロフェッショナルの対話とネットワークのためのプラットフォームを、国家的・規範的な形ではなく、超国家的・分野横断的な形で構築することを目指しています。


 

演出家・飴屋法水との対話
生命いのち」と関わる演劇 — 国東半島(大分県)といわき(福島県)で製作された作品から

 


2月15日(金)14:00–16:00
BankART Studio NYK 2F
日英通訳あり

この数ヵ月という短いあいだに飴屋法水氏の圧倒的な作品を2度も体験するという貴重な機会を得た。ひとつはプログラム・ディレクターとして関わり、もうひとつは観客の1人として立ち会ったこれらの作品は、ともに上演される土地で実際に生活する人々が演者となり、彼らの生活圏そのものが舞台となるサイトスペシフィックな野外パフォーマンスである。これらの飴屋作品において、アーティスト/演者の意図することや観客の期待は(いい意味でも、悪い意味でも)自然という舞台装置によって裏切られる可能性にさらされている。演出家、演者、舞台、観客の関係は常に流動的であり、演出と偶発的な出来事の境界線は限りなく曖昧になる。これらの飴屋作品はその土地に暮らす生身の存在が登場することによって、現実とフィクションを行き来するうちに、観客をも作品の当事者として内包してしまうのだ。

今回とりあげる2本の作品は、『いりくちでくち』(2012年11月/国東半島アートプロジェクト2012秋)、『ブルーシート』(2013年1月/福島県立いわき総合高等学校総合学科第10期生アトリエ公演)。前者は、直径30kmの放射状の地形が特徴的な国東半島が舞台となった。1300年前から続く山岳信仰の歴史を背負った風景や数千の寺社仏閣の存在、農村の生活文化が色濃く残る風土を素材にして、過疎化高齢化が進むなかで暮らす現地のこどもたちと共につくられた12時間のバスツアー作品。後者は、未だに震災の跡が生々しく、現在進行形の事故が起きている福島第一原発から43km圏内にあるいわき総合高校のグランドで上演された。阪神大震災の直前・直後に生まれ、東日本大震災の前日に試験を受けて入学した学生たちの複雑に絡まり合う真情が彼らの日常生活とともに描かれる。どちらの作品も美しく感動的な側面と同時に、悲痛な現実をも浮き彫りにする。両作品のダイジェスト映像を参照して、人間や動物の「生命(いのち)」をこれまで様々な手法で表現してきた飴屋法水氏の創作の核心に迫りたい。(中村茜)

スピーカー:飴屋法水(演出家)、中村茜(プロデューサー/株式会社プリコグ 代表取締役/NPO法人ドリフターズ・インターナショナル 理事)


Photo: zAk

飴屋法水
1961年生。17才のとき唐十郎主催の「状況劇場」に参加、音響担当。23才で演出家として独立。その後、美術や音楽に活動の場を広げながらも、一貫して、人間の生命と生活を、その関心の中心に置く。95年、ヴェネツィア・ビエンナーレ参加後、「動物堂」を開店し、動物の飼育・繁殖にも関わる。近年は、05年「バ  ング  ント」展、08には平田オリザ作『転校生』演出、F/T(フェスティバル/トーキョー)への連続参加、大友良英、山川冬樹とのコラボレーションや、テニスコーツ、七尾旅人とのライブ共演など。


中村茜 プロフィールはこちら


 

「アート」で「世界」を映す場所 — ユニークな美術館、アートセンターの取り組み

 


2月17日(日)13:30–15:30
BankART Studio NYK 2F
日英通訳あり
*TPAMパス不要

美術館と劇場。その接合の役割を果たすアートセンター。ジャンルを超えたアートの紹介は、時間的・空間的境界を超えて行こうとする試みでもあります。原爆投下直後の「風景」を追いかけた丸木夫妻の作品を展示する美術館、「原爆の図丸木美術館」では60年前の出来事ごとといまを繋ぐ役割を負ってます。また、現代と歴史、テクノロジーとヒューマンの融合を追い続けたナム・ジュン・パイクの作品を常設するナム・ジュン・パイク・アートセンターは、パイクの精神そのもののような企画展を開館当初から実施し続けています。メキシコ・シティ、ジャカルタ、モスクワのアートセンターで活躍する3氏も迎え、混迷の果ての鮮やかな融合が望まれる世界において、いま、アートセンターでは何が行なわれているのかを紹介します。

スピーカー
岡村幸宣(原爆の図丸木美術館 学芸員)
イ・チェヨン(Nam June Paik Art Center キュレーター)
アンナ・ベリャーエワ(Platforma メディア部門キュレーター)
マリアナ・アルテアガ(Centro de Cultura Digital プログラム・アドバイザー)
デウィ・ノフィアミ(Dewan Kesenian Jakarta プログラム・ディレクター)


Photo: Shinji Kobayashi

岡村幸宣
東京造形大学造形学部比較造形専攻卒業、同研究生課程修了。2001年より原爆の図丸木美術館(埼玉県)学芸員として勤務、企画展を手がける。近年の企画にChim↑Pom「LEVEL 7 feat. 広島!!!!」(2011年12月)など。


イ・チェヨン
ソウル近郊のナム・ジュン・パイク・アート・センターで展示とパフォーマンス・プログラムの企画を担当。2012年に3名のキュレーター共同企画として行われた展示「x_sound:ジョン・ケージとナム・ジュン・パイク以降」では、第17回月刊美術大賞の展示企画部門で大賞を受賞した。


アンナ・ベリャーエワ
演劇・ダンス・音楽・メディアの4ジャンルの現代アートを複合的に製作・紹介するモスクワのプロジェクト「Platforma」メディア部門キュレーター。巨大な倉庫を改造した空間を有機的に活用し、国内外のアーティストに滞在制作の機会を提供するなど、ユニークな取り組みをおこなっている。


マリアナ・アルテアガ
ダンスキュレーター、コーディネーター、プロデューサー。複数の芸術祭でのキュレーターやディレクターを経て、現在はメキシコ・シティのCentro de Cultura Digitalにてプログラム・アドバイザーを務める。ダンサー、振付家の経験もあり。


デウィ・ノフィアミ
Goethe-Institut Jakartaのマネージャーなどを経て、ジャカルタ周辺の芸術活動を支援・促進するジャカルタ・アーツ・カウンシル(Dewan Kesenian Jakarta/DKJ)のプログラム・ディレクターを2010年より務める。DKJはアート・センターであるTaman Ismail Marzuki(TIM)の運営母体。